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 食と環境の関係を考えるワークショップ型協働モデル事業(協働モデル事業)とは

 命の営みであった食の生産が、経済活動へと組み込まれて効率・利益を偏重する結果、化学肥料の集中利用、大型機械を用いた大規模経営が標準となり、季節と自然に調和した昔ながらの農業が見られなくなってきました。流通にも効率・経済性が強く求められ、結果として生産者の顔、生産・加工のプロセスが見えにくくなっています。加工・調理品の中にはどこの国から入ってきたものかさえわからないものもあるほどです。さらに、いま我々は季節や地域を問わずさまざまな食材を手に入れることができるようになりました。しかし同時に、食べ残しや賞味期限切れによる破棄も急増して環境への負荷も増大し、輸入食品による運搬で過大なエネルギーを使用しています。そして、一粒のお米にも感謝の念をおぼえたほんの数十年前とは大変な変わりようです。健全な食は健全な環境から生み出されるものです。
 宮崎県市町村振興協会から助成を受けて、行政と労働団体、地域住民と協働して、パンづくりを通して食と環境の関係を考える活動です。パンを焼くまでに、塩・バター・酵母・小麦粉などは参加者で手作りして、パン窯も製作していきます。事業終了後は、参加者が各職場や各地域において、協働モデル事業を通して実践し習得した環境に対する問題意識を啓発普及することが期待できます。


協働モデル事業報告会 2011年2月10日


横山理事長による報告

 協働モデル事業の報告会が、第一宮銀ビルで開催されました。事業を報告したのは、子どもの森の他に、(特)チャイルドラインみやざき・都城まちづくり株式会社・財光寺農業小学校の計4団体でした。子どもの森は3番目の発表報告で、10時30分からでした。
 子どもの森では、行政や他の団体、地域住民と協働した事業を意識していましたが、なかなか思うように役割分担もできず、意識して協働事業を進めるのは難しいものだと感じました。行政と協働する点では、他の団体の活動報告でも行政の話がでてこなく、どこまで行政と協働できたのであろうかと疑問も残りました。こちらの想いだけが先走ることのない様に、気をつけて活動をすすめなければなりません。

パン焼き 2011年1月23日

 食と環境の関係を考えるワークショック型協働モデル事業の最後の活動であるパン焼きを体験しました。

 朝8時に集合して、生地作りから始めて一次発酵終了まで、5時間30分かかりました。その後、形成・二次発酵からパン焼きまで、2時間30分がかかり、終了したのは16時でした。
 農薬をまったく使わない自然農法で育った小麦を石臼で挽いた全粒粉(小麦粉)、海の沖で汲んできた海水から作った塩、地元産イチゴから作った酵母、牛乳から作った無塩バターを材料としてパンを焼き上げました。また、パン焼き窯も手作りしました。

 食材料作りからパンを焼くことで、食の大事さを五感で感じることができる(食への意識)、近くで採れた食材は輸送などのエネルギーを軽減できる(エネルギーへの意識)、きれいな海水だからこそ塩を作ることができる(自然への意識)等、お店で購入した食料品では感じることができない多くことを考えることができました。

まずはパン生地作りから作ります。
パン生地を3個つくり、一次発酵と二次発酵に薪ストーブの熱を使用しました。
一次発酵終了後パン生地をパンの大きさに分けて形成して二次発酵へ。
2種類のパンに形成して、パン窯で焼く前に焼きめがきれいに付くように卵をハケ塗。
パン窯を1時間以上に熱してから、パンを焼きます。
パンが焼きあがりました。
全粒粉だけのパン(素朴な味です) 全粒粉とバターと砂糖のパン(香ばしい味です)


 この協働モデル事業は、当初予定された方で一度も参加できなかった方もいましたが、子どもの森会員が3人、門川町行政から3人、労働団体から1人、地域の一般参加者が4人の計11人の方がかかわってくれました。

バターづくりと小麦挽き 2011年1月16日

 搾乳からバターづくりまでを体験する予定だった牧場が、韓国で発生した口蹄疫の影響で、外部からの立ち入りを自粛していたため、急遽、森の学舎でバターづくりを行いました。また、先週に石臼による小麦挽きを体験していない参加者による小麦粉づくりも行いました。


バターづくりの説明

牛乳10ccと生クリーム40ccをペットボトルに入れ(左下へ)

4つのペットボトルをひたすらシェイク

約15分で脂肪分が固形化

できたバターは約130g

前回参加していない方の小麦挽き

小麦粉(230g)と荒粉(100g)、他に屑

今日の参加者


 石臼で挽いた小麦をみて一人の参加者がぽつり、「これから小麦粉を大事に使わなければいかんね」。食を大事に思う気持ちが強くなりました。

《おまけ:イチゴ酵母の一週間》

1月11日 イチゴの甘い匂いが漂っています。

1月13日 イチゴの色素が抜けてきました。

1月14日 色素のほとんどが抜けました。

1月15日 イチゴを潰しました。

1月16日 アルコール臭に似た匂いがして泡が活発にでます。

ろ過しました。冷蔵庫に保管します。


酵母育てと小麦挽き 2011年1月10日

 パン窯の完成が12月になったため予定より遅れての酵母育ての学習となりました。森の学舎の近所で栽培されている身近な食材であるイチゴから酵母を作ります。それと、石臼で小麦を挽き、パンの生地となる小麦粉をつくりました。

 イチゴの酵母は、二通りの作り方を試します。手軽な酵母の育て方として、ひとつは、砂糖水の中にイチゴを浸し4日間かけて酵母を育てます。もうひとつは、水を使わずイチゴの水分だけで、2週間かけて酵母を育てます。酵母菌の繁殖が気温に関係するため、冬の気温が低い時期は、予定している日数以上かかると思われます。どちらも、密封できる瓶を沸騰殺菌してからイチゴを入れ、一日に数回振りかき混ぜ栓を開けて、瓶の中の空気を入れ替えます。
 参加者は、酵母を育てるためイチゴを入れた瓶を自宅に持ち帰り、今日学習した酵母菌の育てを実施し、来週のバター作りに、育てた酵母を持ってきてろ過することにしました。

 石臼での小麦挽きは、最初要領が分からずになかなか粉になりませんでしたが、時間が経つとカンコツをつかみことができ、3時間で1kgの小麦を挽き、小麦粉340gと全粒粉660gができました。小麦粉と全粒粉でそれぞれのパン生地を作る予定です。挽いた小麦は、日向市で自然農法を実践している黒木さんが栽培した小麦を使いました。石臼は、森の学舎のご近所で、昔に使われていた物を譲ってもらいました。


イチゴは軽く洗いへたを取り除きます。

瓶は煮沸殺菌し冷ましてからイチゴを入れます。

100gのイチゴと200ccの水に大さじ一杯の砂糖を加えます。

しっかりと栓をします。

使用した小麦1kgです。

石臼には少しずつ小まめに小麦を投入していきます。

石臼は左廻しでゆっくりと廻します。

石臼から挽いた小麦粉がでてきます。

小麦粉は全粒粉と細かい粉が混ざっています。

細かい粉をふるい分けます。


 食材を自前で作るのは、手間と時間はかかりますが、運搬等のエネルギーを使わず環境に負荷をあたえない、しかも安心安全な食となることができます。できあがったパンが市販されている物より舌で感じる味は劣るかとは思いますが、市販されているパン以上の美味しさを五感で感じることができると思っています。

パン窯づくり 2010年12月

 11月に作ったパン釜土台の上に耐火煉瓦を使って窯を2基作りました。パン窯づくりは小屋改修から始まって完成まで3ヶ月もかかりました。

12月4日

使用する耐火煉瓦は水分を吸わせておきます。

窯の床を耐火セメントを使って耐火煉瓦を敷いていきます。

木槌で耐火煉瓦同士を密着させていきます。

一段目の窯の壁を積んでいきます。

水平をとりながら壁を積みあげていきます。

壁を4段積んだところで天井に移ります。

12月5日 (4日に日没のためできなかった天井を作りました)
天井の型枠を窯の中に置いて耐火煉瓦をアーチ状に並べていきます。

天井は前後2段に耐火煉瓦を並べます。

2基目の窯の壁を積んでいきます。

今日の参加者

暗くなったので投光器で照らしながらの片付けです。

その後
2基目の天井を並べていきます。(12日)

一基のセメントが乾き火を入れました。(11日)

2基目のセメントが乾いたので火を入れました。(23日)


パン窯の土台(足)作り 2010年11月7日

 ブロックとフラワーベースでパン釜を載せる土台作りを行いました。


最初にブロックを設置する箇所に目印をつけます。

使用するブロック20個とフラワーベース3枚です。

セメントをこねます。

まず1個目のブロックを止めるためのセメントを塗ります。
1段目のブロックを積み終わりました。

水平をとりながら2段目のブロックを積みます。

窯の床になるフラワベースの強度をだすため鉄板を引きます。

フラワーベースを載せます。

パン窯を載せる土台が完成。


 次回は、いよいよパン窯本体を作ります。


パン窯の小屋 2010年10月2日、3日

 パン窯を作るためには、床の基礎が必要となります。新たに床の基礎工事をするのは大変なので、森の学舎で使用していない倉庫小屋に、パン窯を設置することにしました。この倉庫小屋は、シロアリで柱と支えがひどく被害を受けているため小屋全体が横揺れるするため修理することになりました。

10月2日
壁にしている波トタンを撤去

小屋の揺れを止めるはずの斜め支え角材のシロアリ被害

波トタンをすべて撤去


 修理は、@斜め支え角材の交換、A立て支え角材の交換、B火打梁の増設置、C屋根の波トタンの一部交換。修理した結果、小屋の横揺れが止まりました。

10月3日

まずは斜め支えと立て支えを全て撤去

新しい斜め支え角材と立て支え角材のはめ込み

火打梁の増設置

完成


 その後に、柱には防腐剤を塗装しました。次回は、パン窯製作です。


塩づくり 2010年9月4日、5日

 パンづくりをする時に使用する塩をつくるため、瀬渡し船で門川沖10数キロまで海水を取りに行きました。陸地に近い湾には、破棄されたビニール袋などのゴミや、汚水等の影響なのか茶色い泡が浮かんでいました。湾内の海水から塩をとるのは無理だと感じました。
 カンムリウミスズメの繁殖地として有名なビロウ島のすぐ近くまで、黒潮が来ることがあります。黒潮の海水が汲めることを期待したのですが、すいぶん沖まできたのに黒潮が見つかりませんでした。黒潮をあきらめて、湾を出た沖の海水を汲みことにしました。それでも陸地に近い海水とは比べると随分きれいな海水です。船長さんの話では、黒潮はもっと透明度が高くきれいな海水なのだそうです。
 帰りの船の中で、お弁当を食べる予定でしたが、船酔いで数名の気分が悪くなったようなので、森の学舎で昼食をとる事にしました。船に乗っていた時間は約2時間でした。

釣り人を歩いて行けない岩場に運ぶ瀬渡し船で海水を汲みに出発
門川湾に浮かぶ乙島 カンムリウミスズメ繁殖地のビロウ島
沖が遠くなりきれいな海で海水を汲む
ポリタンク3個分(約60リットル)の海水採取 塩づくり参加者


 港まで戻ってきたら、採取した海水を持って森の学舎まで移動しました。昼食後に、海水を釜戸で煮て水分をとばしての塩づくりを進めていきました。塩づくりには、準備・後片付けを除いて約3時間かかりました。

さらし布を使って、海水の不純物を通り除きます。

今回は、10リットルの海水を使って塩を作ります。

海水の塩分は、約3.4%で、理論上では250gの塩がとれる計算になるようです。
釜戸に火を入れて、鍋などに入れた海水を煮ていきます。今回は、羽釜を使いました。

火力は強火で、煮詰めて水分を蒸発させて海水を濃縮させていきます。
海水濃度の7倍(約1.5リットル)になったら、塩の析出が始まるので、鍋にこびりつかないように10分の2くらい(約2リットル)になったら、木のしゃもじ等でかき混ぜはじめます。

摂氏100度の1リットルのお湯に溶けることができる塩の量は280gです。濃度が22%(約1.5リットル)になると塩が水に溶けることができなくなり、塩の結晶が現れきます。

塩を煮詰め始め、ここまで約1時間30分でした。
海水の量を調べるには、あらかじめ使用する鍋に水を入れて竹へらなどで水位を測りマークを付けておきます。

今回は、10リットルの海水を使ったので、羽釜に1リットル、2リットル、5リットルの水を入れ竹へらで水位を測り鋸目を付けておきました。

海水をかき混ぜながら、10分の1(1リットル)まで煮詰めたら、硫酸カルシウムが析出され海水が白く濁ってきます。硫酸カルシウムは、にがりなので、コーヒーフィルターなどでろ過して取り除きます。また、鍋の底などに付着している硫酸カルシウムは、こそいで取り除きます。

海水の量が、10分の2から10分の1くらいになるまで、約20分程度でした。

熱湯をろ過するので慎重に!

次の工程でも同じ羽釜を使うので、水で羽釜を洗いました。
硫酸カルシウムをろ過して透明になった海水を中火で、かき混ぜながら煮詰めていきます。強火だと鍋に塩がこびりついてしまうので、必ず中火で煮詰めます。

ぼこぼこと沸騰するので、塩水が飛び散ることがあります。火傷防止のために手袋をしてかき混ぜます。
見る見るうちに塩が析出されます。シャーベット状(ジャリジャリ感)になってきます。

ろ過した海水を中火で煮詰めてシャーベット状になりまで5分もかかりません。常にかき混ぜながら注意深く。

ここの過程が一番盛り上がりました。全員が「おー、おー」と喚起に満ちた声をあげました。なめて本物の塩か確かめてみました。
水分が残っているうちに、鍋を火から外し、コーヒーフィルタでろ過します。フィルターの残ったものが塩です。ろ過した液体がにがりです。

コーヒーフィルター1枚では、フィルターをすり抜ける塩の結晶があるようです。フィルターは2枚重ねにしましょう。

完全に水分を無くなるまで煮詰めると塩が鍋にこびり付き鍋を傷めてしまうので注意してください。

にがりは、豆腐をつくるときの凝固剤として使われます。
左が塩です。右が途中でろ過して取り除いた硫酸カルシウムです。

硫酸カルシウムも、豆腐づくりのにがりとして利用できます。
塩は、フライパンや鍋で炒めて水分を飛ばします。フライパンや鍋に塩が焼きつかないように慎重に炒めます。

時間はかかりますが、天日干しも良いと思います。

210gの塩が完成しました。

ろ過した液体のにがりは、約40ccとれました。
硫酸カルシウムは少々。


 海岸近くの海水は、生活・産業廃水やゴミの投棄で汚れているので、塩をつくることはできません。遠く沖まで出かけて、きれいな海水を汲んでくる必要があります。昔は、塩づくりが各地域で行われていました。きっと、海岸近くの海水もきれいだったのでしょう。参加者は、きれいな海を守る必要性を痛感しました。

事業計画委員会 2010年8月9日

 来年2月にかけて約6ヶ月間をかけて実施する協働モデル事業の計画を検討しました。参加者は、門川町から3人、連合宮崎県北地協から1人、地域住民が2人、子どもの森から4人の計10人でスタートすることになりました。途中からの参加者も募りながら、下記の内容を進めていきます。

《委員会》 8/9(月):事業の詳細計画や担当を決める。2月上旬:改善検討と次年度へ結びつける計画を立てる。
《塩づくり》 9/4(土):船で海沖まで出かけ海水を汲み取り。9/4(土)〜5(日):釜戸で煮詰め塩にする。
《パン釜づくり》 10/2(土)、3(日)、11/6(土)、7(日)、12/4(土)、5(日):釜戸小屋に、耐火煉瓦でパン焼窯を製作する。10月と11月の日程は仮日程として地域の行事等を考慮して日程を決定する。
《天然酵母の学習》 パン釜づくりの最初の日曜日とする。
《小麦粉づくり》 12/4(土)、5(日):石臼で小麦を挽く。また小麦粉づくりの日には「パン釜づくり」も行う。
《バターづくり》 1/16(日):牧場まで出かけ牛の乳搾りをして絞った牛乳をバターに加工する。
《パン焼》 1/22(土)、23(日)

事務局での話し合い